冷凍都市のハルキゲニア

2つの世界を行き来する生物が書いたくそ日記だよ。わーい。

B世界#1

仕事の昼休み休憩時間中のようだった。

寒くも無く暖かくもない妙な気候。だが太陽は出ていて空は青い。

職場の外にいるらしい。何故か懐かしい感じのする住宅街をてくてくと歩いている。

昼休みだが腹は減っていないようだ。どちらかというと脳味噌が疲れているようだった。

しばらく歩くと右手に小学校が見えてきた。小学校の敷地と、今私が歩いている道路とは、どぶ川が流れる側溝と15メートル程はあるのではないかと思われるペンキを塗りたてのフェンスで隔てられていた。

小学校のゲートが見えてきたが、白看板に赤い文字で「防犯カメラ監視中!」と書かれていた。まるでその小学校は、何か決定的な理由で私を拒んでいるかのようだった。

そこからは、何をどうしたのか、どこでどう買い物をしたのかよく覚えていないが、気付くと私の手には缶ビールが握られていた。しかももう開栓されて二口ほど飲んだあとらしい。

なるほど、少しだけ喉に爽快感があり、全身がわずかに火照り、筋肉が弛緩したような感触がある。

その時、道路の向かい側から上司であるMが姿を現した。

「おお、お疲れ、今休憩か?」

「ああ、ええ、はい。」

その上司は現在はあまり関わりが無いが、2-3年前のA世界では直属の上司であった人物だった。仲良くも悪くも無く、ただ何となく苦手であった。

ふとMは私が持っている缶ビールに気付いた。

「お前そんなもん飲んでんのか?」

「あ、いや、これは」

とっさに言い逃れをしようと思考が働いた。だが、その思考通りにMは

「何や、ノンアルコールビールか。びっくりしたわ。」

「あ・・・ええ、そうなんですよ。飲むとすっきりするんですよ。」

Mは特にそれ以上は気にも留めず、私の進行方向とは反対に歩き、角を曲がって消えていった。

Mの姿が見えなくなってから私は何故かひどく自己嫌悪した。この世界でとっさに「自己保身」のような心理が働く嫌らしさをか?勤務中にも関わらず誘惑に耐え切れず気付いたら缶ビールを口にしていた意思の弱さをか?はっきりとはわからない。

その自己嫌悪の感情が大きくなっていき、恐ろしくなったところまで覚えている。

空はあいかわらず青く良い天気だった。